
「嫡出子」と「婚外子」の相続格差は何だったのか

これまで日本の民法は、嫡出子(婚内の子ども)と婚外子(法律婚以外で生まれた子ども)の相続額に格差をつけていたんだ。具体的には、婚外子の相続額は嫡出子の2分の1という規定が民法900条に書き込まれていたんだよ。
例えば、父親が亡くなったとき、嫡出子が600万円を相続する場合、婚外子が同じ立場にいても300万円しかもらえなかったということ。一人の親から生まれた子どもなのに、法律婚という「紙っぺら」の違いで、相続額が半分になってしまう—これが日本の法律だったんだ。
この規定は戦前の家父長制度が色濃く反映されていてね。「正統な妻から生まれた相続人」と「婚外の女性から生まれた子ども」を明確に区別することで、家や財産の安定性を守ろうという思想が背景にあったわけだ。
なぜこんな規定が2023年まで続いたのか
この相続格差は、実は最高裁で何度も「違憲判決」を受けてきたんだよ。2013年、最高裁大法廷は「この規定は憲法14条1項(法の下の平等)に違反する」と明言したわけだ。にもかかわらず、実際に民法が改正されるまでに10年もかかってしまった。
なぜこんなことが起きたのか?理由は簡単で、国会の政治的タイミングの問題だったんだ。婚姻制度そのものや「嫡出性」の概念に関わる改正だから、保守系議員を中心に「家族の伝統を守るべき」という反発があったわけだ。法律は「正しい」だけでは変わらない—政治的合意が必要な世界なんだよ。

最高裁判決と民法改正のズレ
いい質問だね。ここが日本の法律制度の難しいところなんだよ。最高裁判所が「違憲だ」と判決を出したからといって、法律が自動的に変わるわけじゃないんだ。
最高裁の違憲判決は、「その法律は憲法に反している」という宣告だけで、法律を改正する権限は国会(立法機関)にあるんだ。つまり、国会議員たちが「よし、改正しよう」と決定する必要があるわけだ。2013年の判決から2023年の改正までの10年間は、その「政治的決定」が成熟するまでの時間だったということなんだよ。
その間も、婚外子から相続裁判を起こされた家庭裁判所は苦しい判断を強いられていた。「最高裁が違憲と言ってるけど、現行法では婚外子は半額」という矛盾した状況でね。結果として、多くの家庭裁判所は遺産分割調停で「事実上の平等分割」を仲介することで現実的に対応していたんだ。
2023年の民法改正で「完全廃止」へ
2023年3月、国会で民法の相続規定が改正され、婚外子と嫡出子の相続額格差がついに廃止されたんだよ。新しい民法では「子ども全員が平等」という原則が明確に書き込まれた。
これは単なる「権利の平等化」じゃなくて、日本の家族観そのものが変わったということを意味しているんだ。かつての「嫡出性による身分差別」という発想が、完全に時代遅れになったという宣言でもあるわけだ。
この改正によって、シングルマザーや事実婚のカップルから生まれた子どもたちも、法律婚から生まれた兄弟姉妹と全く同じ相続権を持つことになったんだよ。家庭裁判所の負担も大きく軽くなるはずだ。
今日の教授まとめ
日本の民法は、高度経済成長期から令和の時代へ変わるなかで、家族のあり方そのものが多様化したんだ。最高裁が違憲と言った2013年から10年を経て、国会がようやく改正に踏み切った。これは「法律は民意の遅延鏡」だということを示す典型的な例だね。婚外子の相続平等化は、家庭裁判所の紛争が減るだけじゃなく、子どもたちの「出自による差別」という法律的な烙印を消す第一歩なんだよ。
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国会では現在、会期末に向けて複数の法案が審議中だ。7月13日時点で、副首都法案や防災庁設置法などが急ピッチで審議されている。一方で、官房長官は会期延長を否定し、限られた時間で法案処理を急ぐという「綱渡り国会」が続いている。離婚・相続に関わる家族法の改正も、こうした立法環境の影響を受けているわけだ。
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📖 今日の法律用語:嫡出性(ちゃくしゅつせい)=法律婚によって婚内に生まれた子どもの身分の性質。かつての日本法では「嫡出子」と「婚外子」で相続額や身分が異なるという差別制度があったが、現在は廃止されている。

