
基本的人権は「永遠」で「侵す事のできない」
日本国憲法第97条には、こう書かれています。「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、現在及び将来の国民に対し、侵す事のできない永遠の権利として信託されたものである」。
ここで注目すべきポイントが二つあります。一つは「侵す事のできない」という表現です。これは、国民個人が放棄することすら難しいという意味なんだ。つまり、政府は当然のこと、国民本人でさえも人権を簡単には手放せない仕組みになっているんです。もう一つが「永遠の権利」という部分。これは時代が変わっても、政治の流れがどう動いても、この権利は消えないということを意味しています。

なぜ人権は「奪えない」のか?立憲主義の本質
ここで大事な法的概念が登場します。それが立憲主義(りっけんしゅぎ)です。立憲主義とは、国家権力には限界があり、憲法によって制限されるべきだという考え方なんですね。つまり、「どんなに強い権力者が出ても、基本的人権については手をつけてはいけない」というルールを、あらかじめ憲法に書き込んでしまったわけです。
これは戦前の日本が学んだ教訓から生まれました。当時の日本では、政府が国民の人権を制限し、報道の自由や言論の自由が奪われ、結果として深刻な人権侵害が起きました。その反省から、戦後の日本国憲法は「誰がどんな権力を握ろうとも、基本的人権だけは絶対に守る」という強固な枠を設けたんです。最高裁判所も何度も「憲法が保障する人権は国民の基本的な地位」と判示してきました。

「緊急時」でも人権制限には限界がある理由
いい質問だね。確かに、戦争やテロ、パンデミックといった緊急時に、一定の人権制限が認められる場合があります。憲法第12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によってこれを保持しなければならない」と定めていますし、第13条後段では「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については…最大限に尊重される」とありながらも、その後に「ただし、これは公共の福祉に反しない限りにおいてである」という限定がついています。
ポイントは「限度」です。法学の世界では比例原則(ひれいげんそく)という考え方があります。緊急時であっても、その目的を達成するのに必要な範囲内でのみ人権制限が許されるということですね。たとえば、感染症流行時に外出自粛を求めることはできるかもしれませんが、特定の宗教団体だけを不当に抑圧することはできない。そのラインを引くのが、裁判所の役割なんです。

今日の教授まとめ
基本的人権は、単なる法律で与えられた権利ではなく、国民が生まれながらに持つ不可譲の権利として憲法で位置づけられています。国家権力はこれに優先する権利を持たず、万が一人権侵害が起きれば、裁判所によって審査される仕組みになっています。これこそが、戦前の教訓に基づいた日本国憲法の最大の約束なんです。
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📖 今日の法律用語:立憲主義(りっけんしゅぎ)=国家権力を憲法で制限し、基本的人権を守る政治原則。民主主義と区別される重要な概念。

