
SNS中傷が「犯罪」になる理由
スポーツ選手に対するSNS中傷が後を絶たないのは、実は法律の側にも課題があるんだ。日本の刑法では、他人を傷つける発言に対して3つの主要な犯罪が存在する。
1つ目は名誉毀損罪(刑法230条)で、公然と事実を適示して他人の名誉を傷つけた場合、懲役3年以下または罰金50万円に処せられる。2つ目は侮辱罪(刑法231条)で、事実の有無を問わず他人を侮辱した場合、懲役1年以下または罰金30万円だ。そして3つ目が脅迫罪(刑法222条)で、これは身体や生命に害を加えることを告知した場合に成立する。
SNS時代の怖いところは、投稿が「公然」つまり不特定多数に見える状態で行われることなんだ。デジタルの世界では、一度投稿されたら瞬く間に拡散される。だから従来のプライベートな会話での中傷よりも、法的責任が生じやすくなっているんだよ。

「言論の自由」との難しい線引き
でもここが問題なんだ。日本国憲法第21条は「言論・出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めている。つまり、何かを批判する自由は基本的人権なんだ。
じゃあどこが「表現の自由」の限界で、どこからが「違法な中傷」なのか?これは実務上、かなり難しい判断なんだ。例えば「この選手は走り方が下手だ」という純粋な批判は表現の自由だが、「この選手は人間のクズだ」という人格そのものへの攻撃はどうか?最高裁の判例では、事実が公共の関心事であり、その記述が公共の利益のためなら、真実であることを証明できれば名誉毀損にならないとされている。


プラットフォーム企業の責任と課題
ここ数年で注目されているのが、SNS運営企業の責任だ。2022年に改正された特定電気通信役務提供者の損害賠償責任制限及び発信者情報開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)では、SNS企業が違法投稿を削除する際の法的責任が緩和された。つまり、企業が積極的に有害投稿を削除しやすくしたわけだ。
しかし現実には、SNS企業は「言論の自由」と「ユーザー保護」のバランスに悩んでいる。特にTwitter(現X)やTikTokなどは、削除基準を厳格にしすぎると言論統制だという批判を受けるし、緩すぎると中傷の温床になるという批判も受ける。これは法律の問題というより、社会全体の倫理観と法的枠組みがまだ追いついていない証拠なんだ。
被害者救済の実務上の問題
実務的には、SNS中傷の被害者は以下のような方法で対抗できる。1つは投稿者の住所・氏名を開示させる発信者情報開示請求で、裁判所に申し立てて発信者情報の開示を求める。もう1つは民事訴訟で損害賠償請求することだ。
ただし、これらの方法には時間と費用がかかる。特にスポーツ選手のように公の人物だと、「その程度の批判は覚悟すべき」という判例法理もあり、完全な救済は難しいんだ。つまり、法律では完全には守れない「灰色ゾーン」がたくさん存在するということだよ。
今日の教授まとめ
SNS中傷は刑法の名誉毀損罪・侮辱罪などで処罰される可能性があるが、「表現の自由」との線引きが難しく、警察や検察も慎重だ。被害者の救済には民事訴訟や発信者情報開示請求が有効だが、時間と費用がかかる。今後は、プラットフォーム企業の自主規制と、法律のさらなる整備が必要な領域なんだ。
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📰 関連最新ニュース
パリ五輪の金メダリストがSNS中傷対策の強化を訴えるとともに、高市首相の陣営による「中傷動画投稿」疑惑も報道されている。政治家自身がSNS中傷に関わっている可能性があるというのは、実に皮肉なことだ。また「アボカド詐欺」「桃詐欺」など、SNSを悪用した新手の詐欺も増加しており、SNSの法的規制と利用者教育の両方が急務になっている。
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📚 読者の方へ:「これって本当に合法?」「この法律どういう意味?」と思ったら、ぜひ六法や公式資料も一緒に確認してみてください。

📖 今日の法律用語:名誉毀損罪=公然と事実を適示して他人の名誉を傷つける行為。懲役3年以下または罰金50万円に処せられる刑法第230条の犯罪。

